重量物を持ち上げて降ろす瞬間、指が挟まれそうになった——そんなヒヤリとした経験はありませんか。
建設・製造・運輸現場で日々作業するなかで、「指の挟まれ事故」は決して他人事ではありません。厚生労働省のデータによると、労働災害のなかで最も多い疾病部位は「手・指」であり、特に建設業では、はさまれ・巻き込まれ・切れ・こすれによる事故の66%が手指の負傷です(令和2年度・厚生労働省 職場のあんぜんサイトより)。
一般的な作業手袋は、グリップ力や耐摩耗性を高める設計ですが、「指に加わる圧力」そのものを受け止める機能は持っていません。そこで注目されているのが、耐圧グローブです。
この記事では、耐圧グローブの仕組みや一般手袋との違い、現場別の選び方をわかりやすく解説します。
目次
耐圧グローブとは何か?一般の作業手袋との根本的な違い
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一般の作業手袋が防げないもの——指の「挟まれ圧力」
現場で広く使われているナイロン製や革製の作業手袋は、摩擦・摩耗・切れといったリスクへの対策を主な目的として作られています。しかし、重量物が指に落下したときや、機材と足場の間に指が挟まれたときに発生する「圧力」には対応していません。
素材がいくら丈夫でも、外側から押しつぶされる力は布や革を通して指に直接伝わります。骨折や切断につながるような大きな力を、一般の作業手袋だけで防ぐことは困難です。
耐圧グローブの定義:内蔵耐圧板が指を守る構造
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耐圧グローブとは、手袋の内部に金属製の耐圧板を内蔵し、上下から加わる圧力を分散・吸収することで指を保護する作業手袋です。
一般の手袋が「外側からの刺激を素材で受け止める」のに対し、耐圧グローブは「内部の構造物で圧力に耐える」という根本的に異なるアプローチで指を守ります。
なぜ指の挟まれ事故はこれほど多いのか
労働災害の中で最も多い疾病部位は「手・指」

厚生労働省の集計によると、令和4年度の休業4日以上の死傷者数は132,355人にのぼり、過去10年で最多となっています(前年比1,769人増・厚生労働省WEBサイトより)。
このなかで、疾病部位として最も多いのが「手・指」です。人間が道具を使い、物を持ち、運ぶためにどうしても使わざるを得ない部位だからこそ、リスクにさらされやすいという現実があります。
建設業のはさまれ・巻き込まれ事故——指+手で66%を占める現実

建設業に絞ってデータを見ると、その深刻さがさらに際立ちます。令和2年度の建設業における「はさまれ・巻き込まれ・切れ・こすれ」による休業4日以上の労働災害(712件)のうち、疾病部位が「指」だったケースは59%、「手」は7%で、合計66%が手指の負傷でした(厚生労働省 職場のあんぜんサイトより)。
製造業においても、はさまれ・巻き込まれという事故は全体の約3分の1以上を占めており、業種を問わず手指の保護は現場の最重要課題のひとつです。
データまとめ
- ・令和4年度 休業4日以上の死傷者数:132,355人(過去10年で最多)
- ・建設業 はさまれ系事故の疾病部位:指59% + 手7% = 合計66%
- ・製造業でもはさまれ・巻き込まれが事故全体の1/3以上
- ・出典:厚生労働省 職場のあんぜんサイト・厚生労働省WEBサイト
「挟まれ事故・巻き込まれ事故」が手に及ぶと重症化につながりやすいというのが現実です。
比較的多い災害事例であるにもかかわらず、ヘルメットや安全靴のように保護性能が高い装備品としての手袋の着用が義務化されていないところに疑問を感じ、耐圧グローブ「PRESS GUARD」の開発に至りました。
耐圧グローブ「PRESS GUARD」の仕組みと性能—400kgに耐える理由

14枚の耐圧板が指の動きを妨げない理由
PRESS GUARDのインナーには、片手あたり14枚の耐圧板が配置されています。14枚に分割することで、各指の関節の動きに追従でき、グリップや握り込みといった細かい作業の妨げになりません。
また、耐圧板の形状は日本人の平均的な手のサイズをもとに各指ごとに高さ・幅を変えて設計されており、安全性を確保しながら作業性を損なわない構造になっています。
コの字型構造が上下圧力を受け止める仕組み
4本の指の中央に配置されたコの字型の耐圧板が、指の上下に加わる圧力を受け止めます。耐圧板は0.6mmの鉄板をガス軟窒化処理したもので、表面のみを硬化させることで「粘り強さと高い強度」を両立しています。
一般的な熱処理では板の内部まで硬くなり脆くなりますが、ガス軟窒化処理は内部の組織を変化させずに表面だけを硬くするため、手袋の保護プレートとして必要な「しなやかさ」を保てます。
香川県産業技術センターによる試験データ
実際の性能は、香川県産業技術センターによる第三者試験で確認されています。
| 試験項目 | 耐圧性試験(圧力測定器による圧縮荷重試験) |
|---|---|
| 試験結果 | 最大荷重400kg時の変形量:約4mm |
| 出典 | 香川県産業技術センターによる試験 |
また、簡易テストとして、油粘土を入れた一般手袋とPRESS GUARDに2.1kgの錘を高さ25cmから落下させた実験では、一般手袋には凹みが生じましたが、PRESS GUARDには凹みは見られませんでした。
※注意事項※
- ・挟み込み災害から完全に防護することを保証するものではありません。
- ・使用条件や現場作業内容によって防護性能が異なります。
- ・回転工具など巻き込まれる恐れがある作業時には使用しないでください。
耐圧グローブ「PRESS GUARD」の3タイプ—どれが自分の現場に合うか
耐圧グローブ PRESS GUARDは、現場の作業環境に合わせて3つのタイプが用意されています。いずれも特許第7065167号に基づく耐圧構造を共通して採用しており、四国電力株式会社との共同開発によって生まれた製品です。
| 型番 | タイプ | 主な特徴 | こんな現場に |
|---|---|---|---|
| PG-300 | ナイロンジャージ | グリップ力・軽量・スタンダード | 建設・運輸・一般作業 |
| PG-310 | ケブラーニット | 耐切創・難燃・ハイパフォーマンス | 熱源のある現場や鉄骨など危険な作業現場 |
| PG-320 | 牛革 | 耐切創・難燃・耐摩耗・操作性重視 | 指先操作性を重視したい多様なリスクがある現場 |
PG-300(ナイロンジャージ):軽量かつグリップ力重視のスタンダードモデル

掌部に特殊開発のエンボス入りシリコーンレザーを採用することで抜群のグリップ力を発揮し、重量物を運搬しやすくしています。建設・運輸など幅広い現場に対応するスタンダードモデルです。
PG-310(ケブラーニット):耐切創・難燃性が必要な危険な現場にハイパフォーマンスモデル

甲部にケブラーと綿のダブルニット素材を採用し、耐切創性と難燃性を大幅に高めたモデル。鉄骨作業や危険物を扱う現場で、PRESS GUARDの耐圧性能にさらなる保護性能をプラスしています。
PG-320(牛革):耐切創・難燃・操作性を広くカバーするオールラウンドモデル

古くから作業用手袋に使われてきた牛革をベースに、耐切創性・難燃性・耐摩耗性を広くカバーしたモデルです。使い込むほど手に馴染む牛革の特性を活かしながら、指先にはPU合皮を採用して操作性を確保。切創・摩耗・難燃といった複数のリスクに対応しつつ、細かい作業もしやすい手袋を求める方に適しています。
耐圧グローブを選ぶ際に確認しておきたいポイント
使用する現場・作業内容で素材を選ぶ
耐圧グローブの選び方でまず確認すべきは、使用する現場の環境と作業内容です。切創・難燃・耐摩耗を広くカバーしつつ操作性を重視したい場合はPG-320、難燃性や耐切創性をさらに強化したい現場にはPG-310、グリップ力と軽さを重視した幅広い一般作業にはPG-300が基本的な目安になります。
指先の操作性と保護性能のバランスを確認する
耐圧グローブは保護のための構造物を内蔵するぶん、一般手袋と比べて指先の感触に差を感じる場合があります。PRESS GUARDは指先の縫い目をなくした製法で操作性を高めていますが、細かい精密作業が多い場合は実際に装着して確認することをおすすめします。
回転工具など、使用できない作業を事前に確認する
耐圧グローブは挟まれや圧力に対してリスクを軽減する設計ですが、すべての危険に対応できるわけではありません。回転工具など巻き込まれる恐れがある作業時には使用できません。作業内容に合った安全保護具を組み合わせて使用することが重要です。
まとめ:現場の手指を守る選択肢として
耐圧グローブは、一般の作業手袋では対応しきれない「指への圧力・挟まれ事故」のリスクを軽減するために設計された、まったく新しいカテゴリの安全保護具です。
厚生労働省のデータが示すとおり、手指の労働災害は現場において最も多く発生しています。ヘルメット・フルハーネス・安全靴に次ぐ「第四の安全保護具」として、PRESS GUARDは現場の安全対策をワンランク引き上げる選択肢として注目されています。
3タイプから現場環境に合ったモデルを選び、日常の安全対策に取り入れることで、指の挟まれリスクを軽減することが期待できます。
この記事のポイントまとめ
- ・耐圧グローブは内蔵耐圧板で指への圧力を受け止める、一般手袋とはまったく異なる構造
- ・建設業のはさまれ系事故の66%が手指の負傷(令和2年度・厚生労働省調べ)
- ・PRESS GUARDは最大荷重400kg時・変形量4mmという試験データで試 確認(香川県産業技術センター)
- ・PG-300(グリップ力と軽さ重視)・PG-310(耐切創・難燃)・PG-320(牛革・操作性重視)の3タイプから選択可能
- ・特許第7065167号・四国電力株式会社との共同開発モデル